Misskeyサーバーがたくさん建つ直前の23年6月頃、こちらのWikiページに拙いながらも
「どのサーバーにも使える利用規約を」をコンセプトに利用規約のテンプレートを作成しました。
当時はMisskeyがどういったものなのかを詳細に理解していない状態だったので、
①一般的なSNSを想定して規約を盛り込んだ部分があり、Misskeyでは不完全である
②どのような運営をされるかを想定しきれていない
という大きな二つの課題を抱えることになりました。
今回はそういった部分を修正しつつ、
運営者並びに利用者に即した規約はどういったものかを再考していきたいと思い
ユースケースごとに利用規約のテンプレートを再構築します。
具体的にはどういった運営がなされているのか、Misskeyにはどのような特徴があるのかを検討しながら規約を作り直すといったものです。
利用規約を検討する上で現在どのようなサーバーが運営されるのかを検討します。
現在のMisskeyサーバーは主に三つに分かれて運営されているように見受けられます。
・個人、知り合い数人で運営する個人サーバー
・特定の趣味や話題、もしくは共通の意識を持つ知り合いで運営する村サーバー
・不特定多数の利用者を募り運営する汎用サーバー
結論から話しますと、汎用サーバー以外は利用規約なるものはそこまで必要とされません。
個人サーバーや村サーバーは所謂小規模コミュニティであるため、自ずから見知った人間や運営者に対して理解を示す方しか利用しない傾向にあるため、モデレーション活動もそれに倣った形で行われることになります。
そのため、こういったサーバーを運営する場合は利用規約よりもサーバールールを強化するのが望ましいでしょう。
Misskeyは分散型のSNSの形式を有しており、連合といった形で外部のサーバーとも交流できる性質を有してますが、個人サーバー、村サーバーの場合は主にローカルタイムラインですべてが完結される性質を有している場合があり、このような場合は分散SNSというよりもBBSの性質が強いです。
利用規約が存在することによって得られるメリットは、不特定多数の人間に対して一律かつ平等に規定を定め契約を結ぶことによって、差別的な処遇や根拠のないモデレーションを防ぎ、個別具体的なルールを利用者に定める労力を必要とせず円滑に運営することができる点にあり、かつ管理者と利用者での権利と責任、義務を明確にするものであるため、それらのメリットが求められない場合においては冗長で堅苦しいものになってしまいます。
したがって利用規約を必要とする要件は以下の点にあると考えられます。
・規模に問わず不特定多数の利用者が登録する。
・自身で自治行為を行うのではなく、利用者には比較的自由な利用を想定したい。
・ローカルコミュニティサーバーでない。
これらの要件を満たす場合には利用者と管理者が良好な関係を結び、恣意的な判断をしないためにも利用規約を制定するのが望ましいと言えるでしょう。
尚、運営方針の内容により、どの規模でも利用規約を設ける必要がある場合がある点に注意が必要です。
利用規約でなくルールを制定する場合に踏まえておく部分について検討します。
まず、個人サーバーや村サーバーはローカルコミュニティを尊重する性質を有していることから、既存の利用者や管理者の機嫌を伺いながら利用してもらう事が新規並びに既存の利用者に求められることとなります。
そのため、「ここはどのようなサーバーで、どのような人間が利用しているか」をはっきり明示し、どのような行動がタブーであるかを伝えおかなければ、サーバーやコミュニケーションにミスマッチが発生し誰も望まない結果を招くことになるでしょう。
したがって、これらのサーバーは自身がどのようなサーバーでどんな人間が利用しているか、何がだめで何が注意が必要かという件に関してはざっくりと説明しておく必要があります。
身内で使う場合においても自分以外の人間が利用する場合にはプライバシーポリシーに関する規定を設けておくことを強くお勧めします。どれだけ親密な関係を築いていたとしても、各人のプライバシーが保護される必要性がある点には変わりなく、管理者の権限を濫用しみだりに他人のプライバシーを覗き込む行為はタブーです。
また、そういった面でのトラブルは法的紛争に発展しやすい点からも、自身がどのように個人情報を扱うかを明示し、法的リスクを軽減することにより、利用者に安全なプラットフォームを提供できるようにする事が求められるでしょう。
特に連合により他のサーバーとの情報連携を行う性質をMisskeyは有しているため、たとえ身内だけで運営していたとしても、他人の情報の一部が受け取れる性質を有している点を理解しておく必要があります。プライバシーポリシーは自己のサーバーの利用者に限らず、他のサーバーや利害関係者に対してもどういったデータの扱いをするかを明示できる点で安全な運営活動を補助するものとなるでしょう。
利用規約とは違い、ルールはより「お約束」要素が強いです。
約束である以上、それは冗長であってはならず、しかし相手にきちんと伝わる文言である必要があります。例えば以下のようなルールは避けたほうがいいでしょう。
・18歳以上でないと登録できません。ただしOOでOOな方は18歳と同等のレベルの分別を有しているのでOKです。
このルールは冗長、曖昧であるという点に問題があります。例外を許容するか否かは管理者の裁量によるところが強く、混乱を招きかねないため、ルール上ではきっぱりと定めておくとスマートです。また、運営者に裁量権があることを明示しておくのもいいでしょう。
修正例:
・18再以上でないと登録できません。
・管理者が不適切と判断する場合には厳粛に対応させていただきます。
他にも色々と考えられる要素があります。ルールは生き物と同様、コミュニティの成長に併せて変化していくものなので、その都度望ましいルールを制定していくと運営に適った物になるでしょう。
利用規約は非常に長い文書なので以下のページからマークダウンデータを取り込んでください。
サーバー管理者コミュニティとの話し合い、事前調査、学習を経て自主的に作成した利用規約です。
主にMisskey運営に特化して制作しています。
修正、改善が必要な箇所、誤謬、誤表現等がございましたらPR(プルリクエスト)にて修正いただけると幸いです。
尚、「ここが問題である」とだけ伝えられても適切に修正できない可能性がありますので、明確な修正文言を伝えていただけると幸いです。
利用規約を制定することにより利用者の知的財産権や権利、義務等を明確に制定することができ、契約という法的拘束力のある安全な行為によってSNS
を利用していただくことになるため、ルールや自治行為以上に厳粛に、かつ安全な運用を行うための礎になります。
また、利用規約に従った運営がなされるため、管理者の権利濫用や曖昧な判断基準でのもでレーションは行われない、仮に行われたとしてもそれは契約違反の行為となることから一律して暴政的な行動が抑え込めます。
ただし、制定時にはルール以上に注意を払い作成しなければ、諸刃の剣、自他ともに法的拘束力によって苦しめられる事になるため非常に危険です。
以下より利用規約を制定する場合に踏まえておく部分について検討します。
利用規約を制定する場合に注意しなければならないのは、利用規約は管理者と利用を希望する人との間の法的合意です。
一度締結された合意は法的拘束力を持ちます。したがって、利用規約内でのジョークや自虐的行為のようなものは求められないどころかタブーです。どれだけジョークをコンセプトとしたサーバーでもここだけは厳粛にしっかりと制定してください。
また、読みやすさを追及して端的に表現するのも望ましくありません。権利義務を制定する以上、明確で不利益が互いに被らないように綿密に記載する必要があります。
利用規約は管理者と利用者が合意、契約をする形でその旨に従い利用を開始する事から、利用者が継続して契約を続け利用を行うかに関してもその規約に従って判断されるものになります。
その利用規約の内容が自身に何もわからない状態でこっそり変更されていたりすると、不利益を被る可能性が生じることを否定できません。また、利用者の合意なくして行われた不利益な変更は有効に認められるものではないため、管理者にとっても望まない結果になります。
そのことから、利用規約を更新、改定する場合には通知、あるいは継続して利用したことを合意と見做すなど、適切な形で通知に関する要件を整備しておく必要があります。
違法な規約を記載し、同意を得たとてその規約が有効に働くものではありません。
また、違法行為に関しては規約に記載していたとしても無効となる可能性があるのに限らず、他者の権利を侵害し、損害賠償請求や、刑事罰に問われる事態になりかねないため、必ず控えてください。
また、国外の利用者に関して特別な法規が適用されることも念頭に置いて事前に念入りに調査しておきましょう。
ルールと同様の趣旨ですが、利用規約に倣ったより明確かつ詳細なものを提供するようにしてください。
前回記載した利用規約テンプレートが、有難いことに一部の方にご覧いただけたということで、掲載した責務として念入りに再検討を行ったところ、Misskey運営においては規約を設けるか否かというレベルで考慮を行う必要があるのではないかという疑問を抱き始め、今回再投稿という形で長々と述べさせていただく形になりました。
僕自身実務家や学者ではないため至らない点が多く、非常に稚拙な部分もありますが、ご笑覧いただけるとありがたいです。
この分野で見分のある方がおられましたらより適切な規約のテンプレートをご提案いただけると幸いです。
尚、商行為を以てSNSを運営される方は正式にプロの方にご相談いただきますよう宜しくお願い致します。